2011年2月23日水曜日

行間にある見えないモノとの戦い

先週はアメリカ人の友人 Heidiから
「娘が学校の春の旅行で日本へ行くんだけど・・・」
とメールが来た。

彼女の娘 Julieは高校生で、日本の文化や歴史や、最新の日本の音楽なんかにも興味があってかなり精通してるらしい。

問題は、魚介類に深刻なアレルギーがあって、海老とか蟹とかを誤って口にするとアナフィロキシー・ショックを起こしてしまう。

北米で知られた「日本を代表する料理」と言えば勿論その筆頭は「寿司」だし、「天麩羅」とかその他、日本食と呼ばれるカテゴリーの料理には何かと魚介類が絡んで来ることが多い事実を、Heidiは誰かに指摘されてビビった(死語?)らしい。

それで、日本での責任者とか滞在先の担当者とかに手渡す為、Julieのアレルギーに対する簡略な情報文を日本語に翻訳して欲しいと頼まれた。

なので、そのついでに、Epipen/エピペン(アレルギーの反応が起きた時に大腿部に打つペン型の薬品)の使い方の翻訳もしてあげた。

それにしても! 翻訳ってラクじゃないよね、と思う。

翻訳の作業をする時、いつもその度に実感する。

過去にちょっとだけお金を頂いて手伝った事もあるし、副業的なスタンスでしようかなんて考えてみた事もあるけれど、でも、やっぱりダメだな。

「言語オタク」とまでは行かないにしろ、自分自身、言葉とか言い回しとか文章とか、その背景とか理解とか、とても「思い入れ」と言うか執着心の強い部分があって、まぁ俗に言うところの「こだわり」があり過ぎるので、私に翻訳とか英会話の先生とかは絶対に出来ないんじゃないかと思う確信に近いものがある。

つまり、一つの短い文章も掘り下げて、時間と情熱を掛け過ぎてしまいそうでお金=ビジネスには出来ないって感じ。

昨日の話題の「手作り」にも共通する「身を削る」ような苦しみが、小説家とか翻訳家なんかにもある気がする。
(それが快楽を伴うようなものだとはしても)

小説家はまだしも、翻訳は容赦ない「妥協」の連続だし。

小説家の苦しみは、そこにはまだ存在しない新しいオリジナルでまっさらなモノを発想し産み出す種類のものだけど、翻訳家の苦しみは、既にもうそこに存在するモノを全ての方向から観察して受け入れ、理解した後に、全ての要素を変えること無く、全く別の形態に創り変えなければならない種類の苦しみ。そんな感じ?だもの。

ビジネス翻訳は特に、そこに私感は勿論、お節介な親切心からの「追記」などを加えることはタブーだし。

そのくせ、原文がどうしようもなく不完全で理解不能って現実も多いらしいし。

特に日本文の場合、所有格とか目的格とかの表記が曖昧だから。

日本語は、そこに表記されてない事とか、実際には敢えて記述されない物事とかが多過ぎて、そういった物事の全てを察して推し量って受け入れるってのは、ほんとに凄い、特異な文化だとも思う。

だから翻訳って、「言語」だけの問題じゃないのよね。

因に、私が Heidiの為に訳した文章には、日本人の発想を熟知した上での「お節介おばさん」的配慮を含んだ表現もあったりして、だからその部分については Heidiへのメールにもきちんと明記して。

Julieが日本で2週間、無事に楽しく過ごせることを祈りつつ。

2 件のコメント:

マーチン さんのコメント...

アレルギーって大変なんですね。
特に口にする物へのアレルギーだと、気にかけなければならないシーンが多いですし。
お菓子なんかにも色々使われていることを考えると食べる物も限られてしまう。
パンナさんのブログを読みながら食べているお菓子のパッケージを何気なく見てみたら、アレルギー物質として「えび」が入っているって書いてありました。

アナフィラキシーショックがでるとなるとエピネフリンか。知ってる人じゃないと対処も出来ないですもんね。

言葉は文化。
パンナさんの様に両国の言葉を使用する場合は困る事もたくさんあるんでしょうね。
緑色を青と表現してしまう日本では色々と曖昧が残っているようで。
海外の方が日本語は難しいと言ってますが、日本語が難しいのか、日本語の曖昧な部分をどう理解するかに頭を悩ませているのかどっちだろうと疑問に思う事もあります。
あうん?存在するのかな?

Mayumi さんのコメント...

マーチンさん♪

最近、北米ではピーナツにアレルギー反応のある子供が異常に多い傾向があるみたいですし。

学校はナッツ類禁止、って場合が多いです。

何か特定の「食べられないモノ」があるって、ちょっと辛いですよねぇ。

日本で魚介類を避けるって、かなり至難の技って感じですよねー。

実際、お菓子にまで海老の粉とか?入ってる場合ありますもんね。(笑
(えびせん、含め)←表記されてる分、避け易いケド。

知らずに食べてる身近なモノに意外な原材料が使われてる、、、って場合も結構あるかと思うし。

全てを事前にチェックして食べるって面倒そうですよね。
(私はガツガツと何でも食べちゃうから危ないな)笑

日本語の複雑さを考えれば、英語は理解し易い?って感じることもありますね。

外国の文化の人にとって、日本語の習得も難しいけれど、日本人を理解するのもかなり難しいと思いますよ。
(日本人の価値観とか習性とか行動とか全部)笑

単刀直入じゃない分、目に見えない部分を「深読み」する必要があるってのが、かなり煩わしかったり。(笑