前回、カタツムリの指輪について書いた流れで。
別の種類のジュエリーの話。
少し前から大好きなジュエリーの素材 "Fordite/フォーダイト"。
別称 "Detroit Agate/デトロイト・アガット"とも呼ばれるらしいけれど。
昨今はともかく、"Motor Town"として名高い都市、デトロイトには幾つもの自動車工場があって栄えた歴史がある訳だけど。
自動車を生産する過程での塗装の工程で、自動車のボディに塗装された塗料が地面に落ちて何層にも重なり合い、長い年月を経て地層のように縞模様を作ってた。
塗装技術も進歩したり、工場の閉鎖があったりで、近年になって地層状と化していた塗料の塊が発掘されて暫くの間は放置されてらしいんだけど。
ある時、誰かしらが、その断層の縞模様の綺麗さに着目し、削ってみたら思いの外ユニークで、複雑に混じり合った異なる色彩のそれは、自然界の天然石にも似て。
そんな Forditeを、ジュエリー・デザイナー達が見逃すはずもなく。
カットの仕方によって断層の模様の見え方が違うし、裏表での素材感も違うし、その時代の流行の色合いや、車種によって限定された色や、時にメタリックだったり、とにかく色んな要素の色合いが混じってるので、二つとして同じものは存在しない、と言う部分では「雪の結晶」と同様のファンタジーもあり。
まさに "One of a Kind"の個性と希少性を持った作品になる事は間違いなし。
そして私も、そんな Forditeの魅力に魅せられた一人。
Etsyでコロラド州のアーティスト:Nancyさんから Forditeの指輪を購入。
とても気に入って愛用してるのではあるけれど、とにかく、Fordite自体の色と柄の独自性には際限が無く、更に違った印象のものが欲しくなり、Etsyでカボーションとしての Forditeを見つけて、その「石」に見合ったデザインで「カスタム・メイド」として Nancyさんに指輪とペンダントを作って貰うことにした。
まずは、赤い「凹み」が面白くて気に入った緑色系のカボーション。
ペンダントの一部として、「長方形」が欲しくて、割りと少ない選択肢のカタチの中からミント・グリーンに赤色が入ったものを選択。
そして指輪には、既に持っている Nancyさん作のものが三角形に近い扇形で、色合いは黒を基調に青、黄緑、赤とペパーミント・グリーンが縞模様で入ったものなので、今回は全く違う印象の楕円形のもので、色合いも、ペンダントに合わせて赤味が入ってるもの、そして、メタリックが少し混じったものを選んだ。
3つのカボーションたちは、それぞれ全てコロラドの Nancyさんに直接送って貰ったので、私は作品が出来上がるまで実際の質感や色味を見る事は出来なかった。
それでも、自分なりに希望のラフ・スケッチを描いて Nancyさんに送り、メールでのやり取りを何度も重ねた。
指輪は、こんな雰囲気で。
ペンダントは、こんな感じで。。。と言う風に。
過去にモントリオールのアート・センターにて、ジュエリー製作の講座を受講した経験もあり、実は未だに、自分のジュエリーを自作したい欲求はあるんだけど。
ミネアポリスでも、ジュエリー製作のクラスがあるスタジオを見つけたりもしたし。
手を出したい気持ちは山々なのではあるけれど、、、うーん、、、それでもやっぱり自分で自分にブレーキを掛けてる。
それはやっぱり勿論、費用の事もあるし。
あとは時間と環境のこと。
今でさえ Fiberart全般、ラグ・フッキングにしろ、フェルティングにしろ、編物にしろ、あれこれやりたくて時間が足りない状態で、私の仕事場は、既にソーイング・ミシンやロック・ミシンをはじめ、布や毛糸やフェルトやの素材でごった返してる。
そんなところに更にジュエリー製作用の道具やら、高温でメタルを溶かす為のガスだのタンクだのと考えると、何だか今度は安全性にも注意しなければならないリスクを伴う作業だったりする現実もあり。
あぁーーー、今はやっぱり止めておこう。。。そんな結論。
だからこそ、自分で作ろうと思うあれやこれやの面倒や経費や労力を考えると、取り敢えず今の時点では、注文して第三者に創って貰う方が効率が良く、経済的。
まぁ、誰か他の人に創って貰う、、、と言う面で、100%自分のオリジナル性がそのまま寸分違わずデザインに再現される、のは不可能なのではあるけれど。
デザインを考える時、線や点や、ほんの少しの角度や、微妙な事は多い。
ディテール、、、つまり細部をどこまで突き詰めてこだわるのか。
ある面では "control freak"な私なので、可能であるならば、勿論、線や点や微妙な角度までこだわりたい。
でも、それは出来ないと解ってる。
だから普段は Etsyでも "Made to Order"(注文製作)の商品は買わない。
写真で見たのと、実際に創られて手元に届く商品との違いが果たしてどれ程なのか?その作家を知らない限り予想は不可能だから。
届いた商品にガッカリしたくない。
なので今回、Nancyさんへの注文でも、細部まで私が描いたデザイン・スケッチの通りに再現して貰う事は最初から望まず、飽くまでも「こんな感じで」と伝え、あとはジュエリー・デザイナーとしての彼女ならではの才能に任せた。
シェフの彼女に食材を揃え、あとはプロの彼女が好きなような料理して貰おう。
或は、映画ならば私がプロデューサーで、ディレクターの彼女に思う存分、好きなように自由に任せて撮影して貰おう。
そんなアプローチで。
そうして数週間、待ったあとに出来上がって来た指輪とペンダント。
Forditeをカボーションでしか、しかも写真でしか見てなかったから、実際にジュエリーとして作品になったのを見るのは新鮮な驚きで、ちょっとした感動。
へぇ〜!こんな風に仕上がるのかぁ〜〜〜って感じで。
まさにサプライズな、自分にとっての特別な自分への贈り物となった。
そして、カボーションを買った際には気付かなかったのではあるけれど、届いた指輪を手にして見ると、クリーム色のメタリックの一部が「♡型」で。
ちょっとした可愛い「おまけ」的に愛着を増す要素になった。